IDパスを正しく入れたら、なんと、老婆のホログラムが起動しました。
あー、所長室のホログラムがゼロボスだったから、こっちは老婆なんですかね。
共犯者だから。
対になってるんですね、きっと。
思わず、といったように天明寺が「茜……」と漏らします。
やっぱり天明寺の初恋の相手が、この倉敷茜?
とすると四葉たちを2回目のノナリーゲームに参加させた犯人って、この人?
なんか年齢が合わない気もするんですけど……やっぱ分からんや。話を進めましょう。
あ、漢字が違ってた。
正しくは「倉式茜」ですね。
茜さんが喋りだしました。前回と同じく事前に記録された映像なので、こちらからの質問は一切できません。天明寺、可愛そうに。
まず、私たちがこの施設に閉じ込められた理由は?
「計画のため」
ひとこと過ぎるわ!
「AB計画のため」
意味不明です。
ともかく、シグマたちがここに集められたのは、AB計画を実行するためだとか。
ノナリーゲームをさせられたのも、同じ理由からだとか。
さっぱりです。
AB計画とは何なのか?
シグマとファイ、2人の意識を過去に飛ばすこと。それを目的とした計画のこと。
……なんで二人限定なの?
この部屋の意味を教えてくれた茜。
QとはQuantumで、量子のこと。つまりこの部屋は、量子の部屋。
この施設のすべての機能を司るメインコンピューターがここにあるらしい。
そこから繋げて計画を説明してくれる茜。
回りくどいけど、まぁ、分かりやすい。
人間もゼロ兎と同じで、実体は目の前にあるが、本体(思考)は別のところにあるのかもしれない、とか。難しいこと考えるなぁ。でもそんなこと言ってたら、ずっと横たわったまま何かゲームとかのサングラスかけて、オンラインゲームしてるのと同じことですよね。
自分たちは3次元的な現象でしか見れないが、もしかしたらもう一次元高いレベルから見れば……と、ゼロボスと同じようなことを言う茜。
基本的に二人の考え方は同じなんですね。
あ、クォークの言葉を思い出した。この建物を脱出するために肉体を捨てて、魂だけとなる、とか。
宗教みたい。
私たちは個別の物体だけど、1次元高いところから見たらすべて繋がりあって、1つの個として存在しているのではないかということ。それこそがまさに「人間の意識」だと、考えているとか。
まぁ誰にも答えは見つからない分野ですよね。
素敵な考え方だとは思いますが、実際に人間が3次元的な物体である限り、誰かが1次元高いところから確認することはできないんですから。
天明寺が「形態形成場仮説」と、ポツリと漏らしました。
この考え方って、そんな名前で表現できるんですね。超シンプル。
ここで核心。
4次元的に繋がりあっているとすれば、意識を過去や未来に飛ばすことも可能ではないか? そんな仮説を元に立案されたのが、AB計画。
A=After
B=Before
あー、過去と未来、ね。
シグマとファイだけかと思いましたが、天明寺にも茜は語り掛けました。
「あなたも今から半世紀ほど前に、似たような現象を経験していますね?」
つまり茜はここに天明寺がいることも予想してた……?
驚き。天明寺は過去に行って、少女(茜)と出会い、命を救ったとか。
もっと詳しく聞きたいと思ったのですが、あっさりと説明は終わってしまいました。
老婆は準備のために行かないといけない。詳しい話は私のところへ来たらお教えしましょう。待っていますよ。
と言ってくれましたけれど、貴方、死にましたよね?
それとも、それも想定内で、意識だけを過去に飛ばしたとか……あ。
そういやKの素顔がシグマだったのって、シグマ=Kで、シグマが体から意識を過去に飛ばしたから、Kは記憶喪失になったとか、そういう話……? で、老婆も同じような、Kのような本体がどこかにある……?
いかん。分からなくなってきた。